Yasuko Takahashi tax accounting office
2017.04.12 Case Study : 消費税の分割納付について
解説:消費税の分割納付 (国税の猶予制度)について
消費税率が8%になってから、事業年度末に納付する税金が重たいという声が聞かれます。前期の消費税額が60万円以上の場合には翌期は中間でその半額を予定納付することになっています。しかし、高額な固定資産を購入してあるいは、製品の納期の関係で売上高と費用の支払時期がずれたため、その事業年度の消費税が還付になってしまうことがあります。すると、次年度は、予定納税もなく年度末に一括で一年分の消費税を納付しなければなりません。消費税は、本来預かりものですから文句は言えませんが、還付された税金が銀行に残っていない方が一般的ではないでしょか。
そんな場合には、消費税を納める資金が足りないあるいは全額納めてしまうと事業上の資金が不足してしまう(資金ショート)ことにもなりかねません。国は、このような場合に税務署に申請することによって納税の猶予(分割納付)を認める制度を設けています。何等の対応もしなければ、国税の滞納となりますから当然に財産の差押えなどの滞納処分を受けねばなりませんし、分割で納付するにしてもこの制度を利用しない場合は、通常の延滞税(2か月以上で年利9%以上)が課せられます。
制度の名称は、「換価の猶予」といいます。税法の立て付けは、納付できないのなら財産を差し押さえ、それを現金に換価して納付税額に当てます。しかし申請により認められた場合には、差押えを猶予しその猶予期間中の延滞税を一部免除しますから約束通り分割で納付してください。という制度です。
①要件
・国税を一時に納付することにより、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
・納税について誠実な意思を有すると認められること
・換価の猶予を受けようとする国税以外に国税の滞納がないこと
・納付すべき国税の納期限から6か月以内に「換価の猶予申請書」が所轄税務署に提出されていること
・原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること(原則として…です)
②猶予期間
1年の範囲内です。猶予を受けた国税は、原則として猶予期間に各月に分割して納付する必要があります。やむを得ない理由があり認められれば、2年以内の範囲で延長が認めれることがあります。
③申請のための書類
猶予を受ける金額が100万円以下か100万円超過で異なります。100万円以下の場合は、「換価の猶予申請書」「財産収支状況書」で、100万円超の場合には「換価の猶予申請書」「財産目録」「収支明細書」です。「換価の猶予申請書」には、納付すべき国税の額、一時に納付することにより事業の継続が困難となる事情の詳細、納付計画、猶予を望む期間、担保財産の有無について記載します。「財産目録」は、申請書提出日現在の預貯金や売掛金等の財産の状況や借入金・買掛金の状況、現在納付可能資金額そして1か月後の収支の状況について記載します。「収支明細書」は過去1年分の収支の明細、今後1か月の収支の予定、今後1年以内の臨時の収支と税金の納付予定そして、それらをもとにした分割納付予定日と金額を記載します。
さすがに、簡単に作成できるものでもありませんが複雑というほどのものでもありません。肝心な点は、半年後の予定納付額もしっかり納付する予定で分割納付計画を立て実行することにあると所轄の税務職員は指摘していました。この申請が認められると延滞税が大きく異なってきます。